愛情、情熱、添え物の園へ

　パセリを育てる。
　取り敢えずそう宣言してしまったが、一体どうすればいいのだろうか。僕にはそのあたりの知識は全く無い。

　困ったのでインターネットに頼ることにした。

　種蒔きシーズンは年に2回。春の始め頃と秋口。
　種蒔きシーズン以外でも芽は生えてくる。
　種を蒔けば2ヶ月程で食べられるサイズにはなる。
　家庭用のプランターでも栽培可能。

　プランターでお手軽に栽培できるというのは、ありがたい。それならばマンションのベランダの中でも育てられる。
　種蒔きシーズンも、今がまさに春の始めだ。シーズンを外しても成長はするようだが、可能な限り適正な時期に育てて完璧なパセリにしたいので、運が良かった。
　であれば、2ヶ月後には妻の度肝を抜けるはず。

　僕はホームセンターでプランターを購入し、同じく購入した園芸用の土をその中に入れる。合わせて買ったパセリの種を蒔き、マンションのベランダに置いて様子を見た。

　正直なところ、毎日水をやるのは面倒臭かったが、今更後には引けない。
　アンチ・パセリである妻を、正しい考えの基へ導く。それだけを楽しみに、僕は何の返事もしない無口なパセリの種達へ愛情を注ぎ続けた。
　忘れないように水を与え続けること約10日、小さな芽が土から顔を出してきた。

　芽が生えてくると何だか愛着も湧くもので、それからは水を掛けるのも少し楽しくなってくる。

　早く大きくなってほしい。
　大きくなって、パセリの持つポテンシャルを妻に示して、大いに見返してやってほしい。

　僕はパセリ達へ毎日水を欠かさず与えた。

　だが1ヶ月程すると、パセリは茶色に変色し、枯れてしまった。