愛情、情熱、添え物の園へ

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「枯れちゃったね」  妻が少し寂しそうに言う。  何が悪かったんだろう。  やはり日当たりだろうか。ベランダの中はあまり日当たりが良くないので、上手く光合成が出来なかったのかもしれない。となると、もっと日が当たる場所で育てる必要がある。  僕はマンションの管理人さんにお願いし、マンション前の駐車場の一角にプランターを置かせてもらうことにした。水を与えに行くのは多少面倒だけど、そこなら日が良く当たるはずだ。  種蒔きも、この時期であればまだ間に合う。 「そこまでしなくても……」  妻は呆れたように言う。でも僕はパセリを育てなければならない。最高のパセリを育て、彼女のその歪んだ固定観念を是正すると共に、世の不条理に立ち向かう勇気を示さねばならない。  僕は毎日水を撒きに駐車場へ向かった。  毎日水を撒きに行く僕を見かねたのか、途中から妻も手伝うと言い出したが、僕は制止した。彼女に負担を掛けてまで育てるのでは、本末転倒になってしまう。あくまで僕が独りの手で、パセリを育てなければならない。そうしないと、僕は独りでは何も出来ないと思われたままになってしまう。それだけは避けたい。  そして僕とパセリに対する非礼に詫びを入れさせてやる。  だか1ヶ月程経つと、パセリの芽は何者かに荒らされ散り散りに飛散していた。
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