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−−−−キミが言うように、例え醜くても美しくても。僕は“キミ”という存在を、心から愛している。どうしても、そのことを伝えたかったんだ。
甘い夢に堕ちかけた−−−−が。すぐに我を取り戻した野獣は、
「嘘だっ!」
「嘘なんかじゃない。お願い、どうか逃げないで聞いて」
「私は醜いっ、醜いのだっ! こんな醜い野獣の何処がッ・・・・」
「キミは醜くなんかない」
その一言に、野獣は暴れるのをやめてしまった。まさか生きている間に、そんなことを言われると思ってもみなかったからだ。
「今ここにいる、ずっと会いたかった人は−−−−僕よりずっと、幼くて可愛い、綺麗な女の子だよ」
そっと頬を撫でる掌は、野獣−−−−否、少女よりも大きく乾いていて。熱く優しいものだった。
はらりと頬を伝ったのは、ひとしずくの涙。それはいつしか泣くことを忘れ、乾いた頬を潤していった。
「本当に・・・・私なんかで、良いのか?」
「うん」
「私はっ・・・・醜い、野獣なんだぞ」
「言ったじゃないか。そうだとしても、僕はキミの傍にいたい。キミは?」
そんなもの、答えなどとうに決まっている。
もしも・・・・もしも、今一度だけで良い。この醜悪な獣にも人並みに恋することが許されるならと、震えながらもその手を伸ばした。
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