第五章

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第五章

よし、まだ蒼桜は来てないな。それにしても今日は暖かくて良かった! 「まった?」 時間ピッタリに来た蒼桜は花柄のワンピースに薄手のコートを羽織っていた。 「行こっか」 俺たちは電車に乗り城ヶ島に向かった。 移動中俺たちの間に会話はなかった。 ザァー ザァー 波の音が心地よく耳に流れる。 「海はさ夏って感じだけど冬の海もいいね」 「、、、うん」 「、、、やっぱ海、やだった?」 「違うの!、、、ちょっと昨日よく眠れなくて、、」 「そっか、、、」 嬉しかった。蒼桜も今日を楽しみにしててくれたんだ。 海を眺めていた蒼桜が「この貝知ってる?」と見せてきた。その貝には見覚えがあった。 桜貝。 「この貝ね、私のお守りなんだ」 蒼桜の目から水が流れていた。 「え!?ど、どど、どうしたの!?」 「あ、う、ううん!なんでもない気にしないで!」 「、、、、、、」 俺たちはしばらく海を眺め昼を食べるためにレストランに入った。 「蒼桜、何食べる?俺えび天にしようかなー5本の!」 「んー、、うん!決めた!」 「おう!あ、すみま、、、」 ふたつの携帯が同時に鳴った。 「、、、ちっまたあいつかっ」 「っ、、、ごめん!帰る!」 「え!?」 蒼桜は荷物も持たずに店を飛び出した。 「おいっちょっ!待てって、どうした!?」 「、、、早く早く行かなきゃっ!咲がっ、」 「ちょっ落ち着けって!どうしたんだよ!?」 俺はわけわからなかった。誰からの連絡なんだ!?咲って誰だ!?もーわけわかんない! とにかく今は蒼桜を落ち着かせないと 「ほら、落ち着いて、大丈夫だから」 「どうしたの?」 「、、、病院に行かないと」 「病院?、、、わかった。タクシー呼ぶからちょっと待って、どこの病院?」 病院に向かっている時も蒼桜は小さく震えていた。
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