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番外編 俺とあいつのいちゃバリな日々 8
(この回は、佐山目線でお送りします)
太陽がいっぱいの海岸から離れて、深い緑の森へと入っていった。
ウブドと名付けられたここは、ジャングルと棚田、そして芸術が溢れる場所だった。
しと降る雨の日々、俺らは美術館やヨガ道場を回ったり、ホテルのテラスから臨む見事な棚田を眺めたりして過ごしている。
遊び疲れや高揚した気持ちから、すっと脱皮したように落ち着いた俺は、ようやく作曲と向かい合うことになった。
そうすると、この島で見たり聞いたりしたことが、面白いように音になる。
倫の南国の光りに輝く瞳や肌、交わした口づけも、俺のなかで旋律に変わっていく。これもまた幸せな作業だ。
俺が作業をしてる間、倫は買ったお土産を整理したり、ヨガのポーズを取ったりしてる。そんな姿を眺めているのも心が和むんだ。やっぱり倫は俺の宝物だ。
「何を見てるんだ?」
深夜、ふと目を覚ますとあいつがテラスにいた。いつもなら、俺を襲う頃合いの時間なのに。
「あれ、起きちゃったのか。いや、かがり火が綺麗だなと思って」
倫の視線の先を追うと、山のなか、焚かれたかがり火が2つ燃え盛っている。その背後には古い寺院がぼんやりとのしかかっていた。
「ほんとだ」
俺は自然と倫を後ろから抱きしめる。あいつは組んだ俺の腕に両手を乗せた。
「襲おうと思ったのに。しまったな」
「んん? そう毎晩先手を取られてはな」
「人聞きの悪いことを。毎晩じゃないよ。僕も遊び疲れて寝ちゃうから」
不服そうに唇を尖らせる。その唇が俺は大好物なんだ。可愛らしくてたまらないそれに、俺は指を這わせた。
「あ、なにふる」
「欲しくなった。今すぐ」
「どうしようかな……あ、こら」
口のなかに指を突っ込み、あいつの舌をいたぶる。同時に固くなってきた股間を倫のプリっとした尻に擦り付けた。
「ううん……あ……」
首筋を舐めるように舌を這わすと、倫の息遣いが荒くなってきた。俺はあいつの体を反転させて、花びらのような唇を俺のそれで塞いだ。俺の腕のなかであえぐ倫。このまま食い尽くしたい。
「どうする? やめるか?」
「え……意地の、悪いやつだ……」
俺はしがみつくあいつを天蓋付きのベッドに連れていき、服を剥ぐ。露になった絹のような肌の上に覆い被さった。
「ああ……はあっ」
あいつの片足を右腕で上げ、愛撫を続ける。倫は極上の声で俺を夢中にさせた。
山の中腹で燃えていた炎が俺に乗り移ったかのように、俺は熱情が欲するまま倫を抱いた。
翌朝、昨夜の雨が嘘のような青空が、俺らの目覚めを出迎えた。寝ぼけ眼の俺の額に倫がキスをする。
俺はまだ熱を持つ体のまま、倫を優しく抱きしめた。もう、ここでの日々も終わりを告げようとしてる。
少し寂しいけれど、神様の島で過ごした幸福な日々を俺は絶対忘れない。心と新しい楽曲たちに刻み込むよ。
つづく
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