第89話 首輪

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第89話 首輪

 ようやく佐山に僕のプレゼントを上げたのは、クリスマスももう終盤の日暮れだった。  冬の太陽が落ちるのは早い。僕らは昼過ぎまでずっと寝たり起きたりで、目が覚めるとお互いの体を絡み合わせるを続けていた。 「うおっ! これめっちゃカッコいいな。カウントダウンで着よう」  佐山はギフトラッピングをもどかしそうに破り、早速腕を通すと嬉しそうに言ってくれた。うん、凄くよく似合ってる。 「俺もね。ちゃんとプレゼントあるんだ」 「え? もう貰ったよ」  あのライブそのものが僕にとっては大きすぎるプレゼントだった。それに可愛い花束ももらってる。 「まあ、それはそれで。ああなるなんて思ってなかったから。ほら、これだよ」  目の前に差し出されたあいつの大きな手、それは無造作に置かれていた。  僕はそっと手を伸ばし広げてみる。シルバーの細いネックレス。トップには2つのイニシャルが飾られている。 「友達の作家に作ってもらったんだ。オーダーメイドだぞ」 「これ、イニシャル僕のじゃない」  僕の手の中でキラキラと輝いている。僕はまた、目頭が熱くなってるのを感じた。 「つけてやる」  佐山はそう言うと、僕の首にネックレスをつけてくれた。あいつの息がかかる。なんだか何かの儀式みたいだ。 「T.S。つまり俺のだ」  チェーンは短いので鎖骨辺りにトップのイニシャルが来る。それを指でつつき、上目遣いに僕を見ながら言う。 「似合ってるぞ。首輪」 「首輪かいっ!」  僕は犬じゃないよ。そう言おうと思った。でもやめた。僕はおまえの犬でも猫でもなんでもいい。おまえの大切なものであるのなら。 「誰かに持っていかれないようにしないとな」 「ふうん。じゃあ、ちゃんと最後まで責任持てよ」  僕は佐山をじろりと睨む。所有欲まんまの行為だけど、おまえにされるなら僕は嬉しく思うよ。おまえの正直過ぎるそういうとこ、嫌いじゃない。 「当たり前だ」  大きな手が、また僕の顎にかかる。そして間髪入れず、エロい唇が襲ってきた。僕はあいつの甘くて熱いキスを受けながら考える。  ――――次の誕生日には、僕も同じものを贈ろう。もちろんトップは僕のイニシャルで。
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