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番外編 僕とあいつのいちゃバリな日々 1
真冬の日本から、常夏の国、バリ島デンパサール空港に着いた。僕らは飛行機の中で既にTシャツ、ハーフパンツといったまんま観光客の姿になっていたから、気分はもう夏真っ盛りだ。
「結構、湿気を感じるなあ」
降り立ってすぐ汗ばんでくる。寒さで戸締りしていた汗腺が叩き起こされたように活動している。体も驚いちゃうよね。
佐山は藁素材のヘンテコな帽子にグラサン姿。額の汗を拭っている。めっちゃカッコいい。
「ホテルに入れば涼しいよ。それにプールが待ってる」
僕の言葉に嬉しそうに頷いている。
「飛行機の続きが先だけどな」
口の角が、またびろーって感じで上がる。いや、もうプール先でいいよ。
飛行機の続きっていうの気になる? それはまあ、僕らのことだから……想像にお任せするよ。あ、でも誘ったのは僕じゃないからね。最初にギブしたのはあいつだ。
正月は二人とも実家に帰らず、アパートでぬくぬくしていた。寝正月って言うけど、まさにそれで……。ただ、僕は母親と妹とはビデオ通話で年始の挨拶をした。
『お兄ちゃん、やったねえ。ネットで記事読んだよー』
と、澪からのお言葉。佐山がカミングアウトした件。さすがにバレてた。もちろん両親にも伝わったようだ。
『お父さん、がっくり肩を落としてたけど、立ち直りも早かったよ。早速私に婿を取れって。迷惑してるんだからね!』
不逞の兄ですまん。母親からは、元気でやってればいい、と言われたけど、まあ、諦めというか。
ただ、佐山のことを誠実な人みたいだから安心したって言ってくれたよ。うん。それは間違いない。
「おおっ! いい部屋だな。広いし、海が見える!」
まずはオーシャンビューの高級ホテルに宿を取った。でかいプールもあるし、レストランも沢山ある。
長期滞在となると、もう少しランクを落とすところだけど、一週間くらいならここでも大丈夫だ。部屋はツインだけど、ベッドそのものはダブルサイズででかいしね。
「しかし、倫は英語もペラペラなんだな。感心したよ。あっ、このドリンク美味い!」
佐山がウェルカムドリンクを美味しそうに飲みながら言う。一応一流? 大学出だからね。学生時代は海外旅行もしたし。英語は苦手じゃない。
だけど佐山は耳がいいから、定住したらすぐ話せるようになるんじゃないかな。
「それほどでもないよ。それより、プール行こうよ」
「あんた小学生か。まず続きって言ったろ。順番は守れ」
そう言うと、クローゼットに荷物を片付けている僕の背後にやってきて、ぐいっと抱きしめる。汗ばんだ腕が僕の前で組まれて、思わず心臓がきゅんって鳴った。
「仕方ないなぁ……」
「汗も流したいし、シャワー行こうぜ。プールは逃げない」
「僕だって逃げないよ……」
佐山の腕の中で、僕は反転する。あいつの笑顔が視界をいっぱいにして、セクシーな唇が降ってきた。
「んんっ……」
飛行機の化粧室でしたように、あいつの熱くて甘いキスが僕をまた燃えさせる。ただでさえ暑い南国なのに、体が火照って仕方ないよ。
「ここはいいな。簡単に服を脱がせられる。ずっとこういうとこにいたい」
そんなことを耳元で囁きながら、僕の服を脱がし、そのままお姫様だっこしてバスルームに向かった。
「水しか出ない……」
バリ島あるあるのシャワー事情。高級ホテルでも珍しくない。でも、今の僕らには丁度いい水温だ。あいつの熱い愛撫に僕の体は沸騰していたから。
つづく
☆☆☆
番外編、不定期更新ですが、ネタ尽きるまで続きます。ヾ(●´∀`●)
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