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番外編 僕とあいつのいちゃバリな日々 2
プールで泳いでは、そばにあるビーチチェアに転がる。全てにパラソルが付いてるし、バスタオルも無尽蔵に貸してくれる。
テーブルの上にはカラフルでフルーティーなドリンクが置かれ、ここは天国そのものだ。佐山はさっきからアイスクリームを美味しそうに頬張っている。
「美味いなあ、これ。あ、あそこのバー、深夜までやってるみたいだぞ」
プールサイドに設えられたバーは、ビールやウィスキーはもちろん、お洒落なカクテルなんかも豊富だ。夜、涼しくなってからお酒を飲みに来るのはいいな。
「じゃあ、今夜行こうよ」
「うんうん、いいね」
真っ青な空から降り注ぐ太陽の光は、目玉焼きが灼けそうなくらい熱かった。目に映るもの全てが眩しくて色鮮やか。きっと光量が日本とはケタ違いなんだろうな。
そんな原色に溢れる空気のなか、時折聞こえてくるガムランの音色に佐山が何か口ずさんでいる。
「不思議だなあ。メロディーらしきものもないのに。頭に残る」
同じリズム、狭い音域で繰り返されるガムランは、この国を代表する民族音楽だ。金属の煌びやかな打楽器音が耳を刺激する。
あんまり思い出したくないけれど、事務所に報告できる範囲の結果は必要だ。佐山には何かしら仕事に結びつけて欲しいのも事実。
「よしっ!」
お、いきなり何か思いついたか!? 佐山は食べきったアイスのグラスを置き、起き上がった。
「わっ、な、何?」
と、思ったけど、そんなわけないか。あいつは隣のビーチチェアに寝そべる僕の顎をくいっと上げる。
「んっ!」
椰子の木の下のパラソル。ホテルには沢山、色んな国々の人達が羽を伸ばしている。だけど、プールで遊んでいるのは家族連ればかりで、大人たちは昼間っからこんなところにはいないようだ。
でも、だからと言って無人ってわけじゃない。いきなりキスされて狼狽えちゃうよ。
「馬鹿っ! こんなところで」
「うん? さっき、カップルがキスしてたぞ? 開放的気分なんだよ」
「あっ、こら……んふっ」
そういうと、また僕の唇を貪りにくる。いつものエロいそれに翻弄されて、僕はつい、ため息を漏らす。
ただでさえ暑いのに、アイスのように脳から先に溶けてしまいそうだ。それに佐山のことだから、このままで済まないのはわかり過ぎるくらいわかる。
「佐山、部屋行こう。な?」
「欲しくなった?」
なんか腹立つ! でも、そうだよっ。悪いか!?
「おまえだって欲しいんだろ?」
「俺はいっつも欲しい」
聞くんじゃなかった。僕はあいつの腕をむんずと取って部屋へと急ぐ。してやったりのにやけ顔のあいつがそれに続いた。
「やっぱ、最高だな」
「なんだよ……馬鹿やろ……んん……」
折り重なる二つの体。既に乾いている水着を佐山が剥がす。僕らは暗くなるのも気付かずに、広いベッドで絡み合った。
つづく
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