Vier: Überwinden

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「あーあ。結局、取られちゃうんだ……でも、納得できるなんて、思わなかった。与えない人は何も受け取れない。何も持ってないのと同じ。なんかすっきりした……けど。これで私、カンペキに何にもない人になっちゃった。結局変わらないのね」  自嘲気味に呟くゼーレ。だんだん、生きることも諦めている。受けた傷は致命傷ではないが、軽くはない。治さなければ、気力が失われるだけで十分死にうる。  だが、立ち上がって歩み寄ってきたニルヴが、そうはさせなかった。 「それは違うな。確かに今の君は、求めるものを失って完全な虚無になってるかもしれない。けれど、永遠に無ってわけじゃないんだ。誰かがもしかしたら、ひょんなことから助けてくれるかも……まあ、君のことだからそういう人は相当変わってるだろうし、君が救われることは君の所業が許されるというわけではないんだけどね」 「私の所業?」  何も憎まれることはしていないだろうとでも言いたげにするゼーレに、あくまで諌めるようにニルヴは告げる。 「自分で言ってなかったかい? 自分以外に嫌われていてほしいとか。不自然だとは思っていたよ、ずっとね。あの規模で僕の悪評が広まるなんて、普通にはなかなか考えられないことだ。いくら僕がかつての大地主の家系で、昔はイキっていた奴だとしても。それを実現させうる説得力があるのが君だ。噂の広まる力を利用しつつ、それでもほぼ一人でやり切る狂気がある。100%確信してはいないけど……広めたんだろ、君が」 「敵わないなあ、ニルヴ君には」  ようやく、ゼーレは起き上がった。
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