プロローグ:Einsamer Junge

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プロローグ:Einsamer Junge

 ニルヴ・シュテルノ。国立魔法高校にて、成績は学年3位、特に筆記試験は常にトップである、まさに秀才と言われる少年。  その実際の姿は、彼に近しい友人のみが知っている。彼の本当の姿は、言ってみれば「努力家」だ。  彼にとって、大きな喜びは主に2つある。  片方は、知識を得ることだ。知識というのは受け取るだけで満足感を得られる。知識が雑多であってもそれは利用せずとも役立てられるし、披露すればとても気持ちがいい。そのためにいくら努力しても苦にはならなかった。  もう一つは、他人を上回ることだ。自分が他人より優れていることを自覚することで、何物にも代えがたい、大きな快感を得ていた。  これらの喜びへの欲求が、彼の努力というものに対する原動力となっていることは想像に難くない。そして、その欲求は極めて強いとも言える。そうでなければ、ここまで登りつめることはできない。  彼の立ち位置は、普通の人間が現段階で辿り着く限界点である。  本人も、それは理解している。だからこそ、自分より上に立つ存在が現在居ても、それに納得できるのだ。  恵まれた血統に恵まれた教育を経たエリート、エンゼル・トイフェル。ニルヴは知らないが、強大な魔法の力を持つ魔女として生まれていた少女、アイリア・トレーツ。  その納得には、彼女らの複雑な背景も原因があるのかもしれない。
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