Vier: Überwinden

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 そんな折、校長がいきなりゼーレの後ろにやって来た。突然のことにその場の全員が凍りついているのにも構わず、勝手に喋りだす。 「どーもどーも。ちょっとこの子貰っていきますよー。ニルヴ君、カッコいいこと言いますねえ。だからあなたの言うとおり、この、ゼーレさんでしたっけ? 私のところで預かって、研究チームに引き入れます。いやあ、人手が増えてちょうどいい!」 「ちょっと何すんの! 離して!」  ゼーレは肩に担がれながらも必死に抵抗するが、校長の細い腕に見た目からは想像できないほどの力がかかっており、全く離れそうにない。 「まあまあ。あなた、親とかいますか?」 「いない、けど……私、施設育ちだし、今は一人で暮らしてる。色々、合法じゃないことしながら……」 「へえ、あなたの歳で。なんかもっと助けてあげたくなりましたよ。養子にしたいくらいですね。叶うとは思えない願いですけど、私はずっと見てて気に入りましたよ。魔女では明らかにないですが、それに比肩しうる才能の持ち主。自分の教え子に殺害予告した事実があるから我が校に迎えるのは厳しいところです。やっぱり私の弟子になりません?」  ゼーレは唸る。肩に担がれたままとにかく唸る。かなり悩んでいるようだ。悩む理由は、校長にもすぐに察せた。 「厳しくはしませんよ。やりがいは可能な限り保証します。ニルヴ君がさっき言ってたように、あなたの人生を支えてあげられるのって私みたいな変な人なんですよ。大丈夫。社会的地位だってちゃんとありますし、何より個性豊かな仲間がいる。それに、あなたのそのずば抜けた戦闘能力も私が求めるものです。さあさ、私と一緒に行ってみませんか?」 「……悪くは……ないかも」  こうして、いきなりゼーレ・ヘルツはアプフェルドルン校長の弟子になった。
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