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なんでそこまで知っているんだろう。おまけに立て板に水を流すみたいに饒舌だし。カリンがあんぐりと口を開けて飛天を見ると、
「はるか先の未来は、つねに揺れ動いてる。砕牙王が出会うたびにちがう顔なのが、その証だ。闇女神は昔から、これぞと見こんだ男を闇に堕として煉獄に引きこむきらいがある。砕牙王はきっと、そのうちの誰かを核にして生まれるんだろう」
つまりヒノシが砕牙王の器に選ばれるかは、まだ確定事項じゃないんだ、とアヤタカは言い切った。
「そ、そうなの?!」
「カリンはヒノシに、予知夢を見せたろ? あれで、あいつの心が揺らいだ」
「……本当?」
「ああ。それまで運命を回転させてばかりだった巨人が、『世界の行く末には自分の行動にも責任がある』って気づいた。これはすごく重要なことなんだ」
「未来が、変わったかもってこと?」
「そう。どう潮目が変化したかまでは、その時がくるまでわからないけど」
飛天は深い青空のように透きとおった目をむける。
「だから、とにかくヒノシのことは、もう考えるの禁止な」
カリンは口をとがらせた。そんな念押しされても。髪の色や火傷は、不可抗力なのに。
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