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顛末(二)
あの時、玉瀬が遅れて庵へ到着する前に、晴道がツキへ問いかけていたこと……それは依頼人の息子の他に、神隠しにあった人間たちについてだった。
今も無事に暮らしているのなら、その人々も呼んでくるつもりだったが、ツキは首を振ったのだ。
幻の中にいても、人間は年を取るし、体調も崩す。いつかは命尽きるのだと。そして、他の皆はすでに生きてはいなかった。
そうなっては、いくら術師とて彼らをどこへ帰せばよいか分からない。故に、ツキは彼らも全て連れていったのだ。
「なんだか悲しい話でしたね。気の毒というか……巻き込まれた人々も、ツキさん自身も」
玉瀬が眉根を寄せて呟くと、師が苦笑した。
「だから、せめてと嘘をついたんだろう?」
言われて、玉瀬は更地に唯一の切り株を見た。晴道もそちらに目を向ける。
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