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顛末(三)
「知らなくていいこともあると思ったんです。彼女は悔いていましたし、わざわざ酷な真を上乗せする必要はないと考えました」
玉瀬は御神木が病で枯れたと告げたが、それは偽りだった。
本当は、町はとうに戦によって焼き払われていた。そして、御神木も攻めいってきた者に火を放たれたのだ。混乱が収まった後、倒れると危ぶまれた御神木は切り倒されたという。これが、焦げた切り株が残っている理由である。
「お前の優しさは、人として美徳だ。だから咎めるつもりなどない。まあ、俺たちの生業は異質だからな。彼女のように、すんなり受け入れてくれる者が少ないことはよく分かっているだろう。優しさが己の首を絞めないよう、気をつけてさえいればいいさ」
師の言葉に、玉瀬はにっと笑って返す。
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