48人が本棚に入れています
本棚に追加
町中にて
「……もし。少々お伺いしたいのですが」
逢魔時の町中で、すれ違う町人を呼び止めたのは小柄な人物だ。
笠に脚絆、小さな荷を持った旅の装いの彼は、名を玉瀬という。数えで十五、人懐こい笑顔の少年だ。
声に振り返った町人が、まじまじと見つめて問うてきた。
「おや、どうしたんだい?」
「はい、実は人を捜しておりまして。少し前にこの地に来ているはずなんですが」
聞けば、年の頃は三十代前半の男で、身の丈は五尺四寸五分(一六五センチ)ほどというから人より少し上背があるようだ。太めの眉に切れ長の目をした、なかなかに凛々しい人物らしい。
なるほど、目の前の少年とは真逆の見目に思われた。
「そうさなあ。なんせ大きな町だから、皆と顔見知りとはいかんし」
最初のコメントを投稿しよう!