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顛末(四)
「弟子は師匠の背を見て育つんですから、必然ですね」
「ん? 俺はいつも平常心だろう? 合理的に動くことを一に考えているし、お前ほど甘くはないぞ」
「それなら、おれと落ち合った日、すぐにでもツキさんに話を切り出せば良かったじゃないですか。そうしなかったのは、短い時間でも彼女に町を楽しませてあげたいと思ったからでしょう?」
幻の町に踏み込むと、徐々に現世での記憶が薄れていくようだった。
今回の怪異を調べていた際、その点を危惧した晴道は、自分が目的を忘れた場合の備えを考えた。それが、便りのない日が三日続いた時には、玉瀬に己を捜してもらうというものだ。
夕刻に町を訪れ、翌日一日かけて依頼人の息子を捜索。少なくともそこまでは己を保っていたはずだが、その後二日のうちに、なすべきことを忘れていた。
長く留まるとその分だけ、幻に取り込まれる危険が増すのは明らかであった。
合理的にというならば、散歩に一日費やすのは得策ではないはずだ。
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