顛末(五)

1/1
前へ
/21ページ
次へ

顛末(五)

 しかし、晴道は頑として否定する。 「違うな。話をするにしても、耳を傾けてもらえなければ意味がない。だから、相手との距離を縮める何かが必要だった。それがあの散歩だっただけだ」  筋が通っているだろうと得意気な師に、玉瀬は肩を竦めた。  少年の脳裏には焼きついている。師が散歩を提案した時の顔が。それは確かに、柔らかで悲しげであったのだ。 (……うそつき)  玉瀬は心内(こころうち)でそう呟き、身を翻した晴道の背を追った。 【完】 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加