48人が本棚に入れています
本棚に追加
顛末(五)
しかし、晴道は頑として否定する。
「違うな。話をするにしても、耳を傾けてもらえなければ意味がない。だから、相手との距離を縮める何かが必要だった。それがあの散歩だっただけだ」
筋が通っているだろうと得意気な師に、玉瀬は肩を竦めた。
少年の脳裏には焼きついている。師が散歩を提案した時の顔が。それは確かに、柔らかで悲しげであったのだ。
(……うそつき)
玉瀬は心内でそう呟き、身を翻した晴道の背を追った。
【完】
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
最初のコメントを投稿しよう!