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町人の提案
町人の言葉どおり、この町には随分活気があった。様々な店が並び、行き交う人々は戦国の世でもなお、生き生きとしている。
と、しばし思案していた町人が、唐突に確かめてきた。
「ところで、あんた、ここに来るのは初めてかい?」
「え? はい……なぜですか」
首を傾げる少年に相手が告げる。
「この地には御神木とされるけやきがあってな。旅人にも挨拶に行くよう勧めてるのさ。近くの庵に御神木の世話をしている御仁もお住まいだ。もし、あんたの捜し人がここに来ていたんなら、そのお人が何か見知っているかもしれんよ」
これに、なぜか困ったような笑みを浮かべつつも、少年は行き方を教えてもらってその場を後にした。
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