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道案内
少しの間ぼうっと見惚れていたが、慌てて頭を振ると捜し人について尋ねてみる。
「ああ、その方なら確かにこちらにいらしたわ。この地がお気に召したようで、町屋を借りて腰を落ち着けることにされたとか。ご案内しましょうか?」
「ぜひ、お願いします」
頷いた玉瀬に笑いかけ、彼女は前を歩きだした。
「あ、まだ名乗っていませんでしたわ。私、ツキと申します。どうぞお見知りおきを」
「よろしくお願いします」
楽しそうなツキに反して、玉瀬はまたも困り顔になる。
小首を傾げた彼女は、しかし、特段気にする様子もなく歩を進めた。
「さあ、着きましたよ」
二人が足を止めた頃には、とっぷりと日が暮れていた。
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