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依頼(一)
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晴道と玉瀬、実はこの二人は民間の陰陽師、あるいは修験者の類――奇妙な事柄の解決を生業にしている者たちだった。
そんな彼らのもとに、依頼が持ち込まれたのは二十日前だ。
『息子が神隠しにあった』
そう訴えるのは農民の母親で、息子は作物を町へ売りに行ったきり帰ってこないのだという。
もちろんそれだけで神隠しと決めるのは早計だと、母親を宥めた。しかし彼女は強く首を振った。次いで、道中には曰くの場所があるのだと身を乗り出してきた。
町に入るいくらか手前、木肌の焦げた切り株がある他はただの更地なのだが、時折ここで人が消えるとの噂がある。夕刻に一人で通ると危ないのだとか。ただし、頻繁な出来事ではなく、証となるものもないため、うすら寒いがよくある伝承として埋もれる程度の話だった。
それでも、わざわざその刻限に道を行こうとする者はいない。
息子も、日が傾くまでには引き返すはずだったのだ。それが、何かの手違いで遅くなってしまったに違いない。
涙ながらに懇願されて、師弟は依頼を受けたのだった。
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