依頼(一)

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依頼(一)

***  晴道と玉瀬、実はこの二人は民間の陰陽師、あるいは修験者(しゅげんしゃ)(たぐい)――奇妙な事柄の解決を生業(なりわい)にしている者たちだった。  そんな彼らのもとに、依頼が持ち込まれたのは二十日前だ。 『息子が神隠しにあった』  そう訴えるのは農民の母親で、息子は作物を町へ売りに行ったきり帰ってこないのだという。  もちろんそれだけで神隠しと決めるのは早計(そうけい)だと、母親を(なだ)めた。しかし彼女は強く首を振った。次いで、道中には曰くの場所があるのだと身を乗り出してきた。  町に入るいくらか手前、木肌の焦げた切り株がある他はただの更地(さらち)なのだが、時折ここで人が消えるとの噂がある。夕刻に一人で通ると危ないのだとか。ただし、頻繁な出来事ではなく、証となるものもないため、うすら寒いがよくある伝承として埋もれる程度の話だった。  それでも、わざわざその刻限に道を行こうとする者はいない。  息子も、日が傾くまでには引き返すはずだったのだ。それが、何かの手違いで遅くなってしまったに違いない。  涙ながらに懇願されて、師弟は依頼を受けたのだった。 ***
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