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依頼(二)
「……それにしても、あっさり俺のことを尋ねるなんて。慎重さに欠けるな」
そう指摘された玉瀬は、唇を尖らせて応じた。
「師匠が何の目印も用意してくれなかったからでしょう? 随分捜し回ったんですから。師匠こそ、どうやってあの人の息子さんを見つけたんですか」
「俺は誰にも頼ってないぞ。母御から聞いた特徴、加えて、俺自身が住まいを求めている体で、空き家の話などを探ってな。地道に突き止めたんだ」
ここで晴道は、どうだとばかりに胸を張って弟子を見た。
彼は、いい年をして時折子どもっぽい。
「さすがは師匠です」
この一言で、簡単に上機嫌だ。玉瀬はさっさと続きを問う。
「それで、息子さんはどこに?」
「ああ、このはす向かいにいる。平穏に過ごしているようだ」
神隠しにあって平和に暮らしているとは、実に奇妙だ。
しかし、二人は全て承知で話を続ける。
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