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「鯉」北村アツシ・作
「鯉」北村アツシ・作
「ケンイチくーん! 遅くなってごめーん!」
「別れてもいいくらいの遅刻だぞ」
区湖板マヤとケンイチが付き合い始めて今日で一年。2人はデートのために、ショッピングモール前に集合した。
「遅れ過ぎた理由述べると……、毎週遥か遠くから通い込んでいる塾から帰ってたら、逮捕途中に逃げて追われている男が迫って来て、近辺を迅速に迂回しながら逃げてたんだよ。運良く遭遇した近所の辻さんが適当に退け、追い返してくれたから良かったけど……それで遅れちゃった。でも今週の遊ぶ日を選んで以降、ケンイチ君に逢えるのをずっと楽しみにしてたから、頼み込んで辻さんに送迎遂行してもらったんだよ、だから楽しもう今日は」
「そうだったんだ、全然いいよ、少し遅れたくらい」
その返事を聞いたマヤは不安めいた表情を和らげ、右手の甲で自分の左足首を叩いた。
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