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其れから1週間後、日照りが続き、俺は初めて色んな花を見た。
黄色い花、小さな紫色の花、冷たい故郷には無い花ばかりで気分が舞っていた頃に、
枝に止まって身なりを整え、毛繕いしていれば、風が吹き抜け羽を揺らした。
「 ん? 」
「 ふぁ〜 」
眠そうな声と共に、淡い桜色の髪を揺らした青年はその髪と良く似合う着物を着ていた。
目が合えば彼とふっと花が舞うように柔らかく笑った。
「 おや、ボクは君を知ってるよ。ずっと此処にいる子だね? 」
「 っ〜!俺は、ワタル!!その…ずっと会いたかったです! 」
春になり咲き始めた色んな花よりも、美しく綺麗な方だと思って、頬が火照るままに彼に人生初の告白すれば、彼は優しげな笑みを向ける。
「 こんな山の中に残った老いぼれに会いたいとは、物好きな子だね 」
「 そんな事ないです!貴方は、凄く綺麗で…。俺は、待っててよかった 」
「 そう言ってくれる君と、出会えて良かったよ 」
彼の名前は″ サクラ ″と言うらしい。
同じ仲間達は人間によって移動されたり、切り倒された為に、この山の奥に一人だけ残ってるらしい。
もう何十年も話し相手がいなかったから為に、俺が話す、旅をしてきた話や、飛んだ先にあった話などを楽しそうに聞いてくれた。
「 サクラ!さっき、知らない鳥がいてな!ヤマガラとかウグイスって名前らしい! 」
サクラは遠くに行くことが出来ない。
脚が弱いらしく、その場から動かないから俺がいつも話を持ってくる。
笑顔で話す俺に、サクラはゆっくり手を伸ばし、髪に触れ耳横へと彼の花を付けてくれた。
「 ん……? 」
「 ワタル。そろそろ行かなくては駄目じゃないか?君は冬鳥なのだから 」
「 行かない!俺はずっと、サクラの傍にいる!大丈夫、夏とか余裕だって! 」
「 ………そうかい 」
まだ俺を子供扱いするけど、俺はもう立派な大人だ。
そりゃサクラに比べたら子供かも知れないけどな。
そのまま頭を撫でる手にムスッとするも、サクラが少しだけ悲しそうな顔をした事が気に掛かる。
少しして、サクラは欠伸をすることが増えた、サクラの花弁が地面へと落ちていくことが少し寂しい。
一面桃色の芝生みたいになるけど、増える度に彼は元気を無くす。
「 サクラ、大丈夫?調子悪いとか? 」
「 違うよ。ワタル…よく聞いて 」
「 ……うん 」
俺の手をそっと引いたサクラの腕の中へとすっぽりと埋まれば、彼は白髪の短髪を撫でながら語り掛けるように言の葉を紡ぐ。
「 ボクはこれから、長い眠りにつく。次に起きるのは、君と出会った日のように、日照りが続いた時だよ。ボクが居なくなってもまた、会えるからね 」
「 うん!また冬に来て、春になるまで待っているよ。サクラと会う為に 」
会ってから2週間後に、サクラは深い眠りについた。
姿が見えなくなって、花は全て緑色の葉になった頃に、暑さに耐えきれなくなってきた。
「 サクラ、また来るから!それまで待っててな 」
俺は太陽が真上にある時は暑いために、陽射しが強くない時に休憩を挟みながら故郷へと戻った。
それから俺は、サクラに会いに片道2000キロの距離を飛んでいた。
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