73人が本棚に入れています
本棚に追加
だが予想していた衝撃はやってこない。もしかして一瞬すぎて俺もう天国にいる?
そんな不安が脳裏を過り、俺は恐る恐る目を開けた。
目の前にはトミさんの後ろ姿。
「おい、何ボケっとしている。せめて立ち上がって逃げるくらいの事はしろ」
錆びた本体からシュゥゥゥゥ……と黒いモヤが蒸発するように消えていく。トミさんの足元には切り落とされた黒い手が落ちていた。
どうもトミさんが間一髪で防いでくれたらしい。ヒュー!
……いや、ふざけている場合ではない。そんな場面ではないことはわかっているけど、心の中くらいふざけてないとこの状況はやってられん!
切り落とされた黒い腕はまるで本体に収納されていく掃除機のコンセントの様にシュルシュルと曽祖父の背後へと収まっていく。それでも新たな黒い腕たちが背後から出てきている。どうもあれは無限に作り出せるようだ。生前何をしていればそうなるんですかひいじいちゃん。
バンバン!とどこからともなく空気を震わせる発砲音が鳴り響く。俺は驚いて音の発生源を辿れば、なんとおっさんが拳銃で悪霊に成り果てた曽祖父を撃っていた。ちょっと待って、どこにそんなの隠し持ってたのとか色々と聞きたいことはあるけどこれだけは言わせてくれ。銃刀法違反だぞ。
「なん?!」
しかし咄嗟に口から出た言葉がこれだけだった。
その言葉が自分に向かっていると気づいたおっさんは口を開くも、そこまで相手している暇ないのかこっちに目もくれない。
「何って、拳銃だけど。こういうのを仕事にしてんだから何かしら武器ないとやってけないだろ」
「いや正論ですけど!相手幽霊ですよ?!拳銃なんて意味あるんです?!てかそもそも銃刀法違反!」
「拳銃をかいぞ……エアガンを怪奇に対応できるように弾やら何やら色々とそれ仕様にされてるやつだから大丈夫」
「おいこのおっさん今改造って言いかけたぞ。言い直しても明らかにエアガンの様な軽い音じゃなかったぞ。どう聞いても火薬使われてるぞ。そんな兵器どうやって手に入れたんですか」
「前職からパクっ……譲ってもらった」
「今この人パクったって言いかけた。管理しっかりしてよ警察」
「大丈夫大丈夫、人間に害はないから」
「そういう問題じゃないんですよ」
「おい漫才してないで少しは手伝え人間ども」
俺がおっさんのパクってきた魔改造拳銃に突っかかっている間に1人で曽祖父の対応をしていたトミさん。でもやっぱり限界はあるのか静かな怒りがこちらへと向いた。
「へーへー、わぁったわぁった。おじさん援護に回るから頼んだぞエムシ」
最初のコメントを投稿しよう!