【11】ギフト

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俊が彼氏ヅラしててうざい。 季節は本格的な夏が始まろうとしている。 俺のテンションが一番落ちる季節が、だ。 夏はきらい。というか苦手。どんなに暑くてもあまり汗が出ないから体内に熱がこもってしまって本当にキツイ。 だからなるべくこの時期は(いや、いつもだけど)家で過ごしたい。冷房ガンガンの部屋で漫画読んでアイス食べて過ごしたいんだ、俺は。 あと、暑苦しい人も嫌い。例えばそう、とか。 あれ以来、俊がデレデレしていて気持ち悪い。 別に俺はあの告白にOKなんてしていないのに、勝手に付き合ってると思っているらしい。どんだけ自分に都合いい脳ミソなんだ。 だから俺は昨日言ってやったんだ。 「一回死んでこい」と。 付き合う付き合わないとか、好きとか嫌いとか、ノンケがどうとか、そんな事はとりあえずどうでも良くて、俺はどうしても許せないんだ。あんなに楽しみにしていた推しカプとのお食事会を邪魔された事が。 冷静になってよくよく考えてみると、めっっちゃヒドくない? あれ。絶対やっちゃダメなやつだよね、普通。それをさ、あいつはやっちゃうんだよ、平気な顔でさ。恐ろしいよ、もう。 それに、当日のあんなギリギリでドタキャンしてしまったし、さすがに翔太さんに「また別の日程でどうですか?」なんて、そんな身の程知らずなこと言えない。 まぁ、あの優しい翔太さんだから全然怒ってなかったんだけど。それがまた申し訳なくて、胸が苦しくなるんだ。きっと俺はもう彼氏さんに嫌われちゃったし……。もう一度わざわざ時間を作って会おうなんて、そんな風に思ってもらえるはずがない。……うぅ、考えると泣けてくる。 それもこれも全部全部、俊のせいだ。許せない。 あいつさえいなければ── だから今度こそちゃんと、あの有罪野郎に罰を与えてやるんだ。俊が一番ツライであろう、重たい重たい罰を。 「もう俊とはエッチしない」 『え。え? エェ────────────!!』 これが昨日の定時連絡の時の話。(ちなみに"定時連絡"は、俊が毎日同じ時間にかけてくる電話のこと) 『ちょっ、ちょっと待ってよ……さすがにそれはないだろ?』 「なくない。俊とするの疲れるし」 『いやいや、あれはイイ疲れじゃん』 「は?」 『えっと、ちゃんと反省します。本当にごめんなさい、もう二度としません。だからそれだけは何卒ご勘弁を……』 スマホを耳に当てた状態の俊が頭を下げている光景が目に浮かんだ。 けど、そんな口だけ謝罪はいらない。 死ねないならせめて死ぬほど我慢させてやる!
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