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いつもと同じであるはずの帰り道の景色がどこか違う。気温は高く暑いはずなのに、全く暑さを感じない。空から降り注ぐ太陽の光だけが罪人を咎めるように、僕に突き刺さる。
渇く。凍った心だけを残してすべてが渇いていく。本当に異質なのは景色なんかじゃなくて僕という存在。そんなことはとっくに分かっていたはずなのに。
集団の中に異質なものが混ざっていると、そいつは必ず排除される。誰しもがそうならないようにと普通でいるよう努力する。これ以上に無駄な努力は存在しない。誰も望む普通とはいったいなんだ?
僕は自ら望んで一人になった。殺せ、余計なものを望む自分を。
(そのくらい簡単だろ?)
僕はこれまでに何度も自分自身を殺してきた。もう何もいらない、もう何も望まない。僕の心は永遠に凍ったままでいい。もう二度と傷つかなくてすむように、誰とももう関わらないようにと独りで誓う。
──さよなら。
僕は生きることからまた一歩退く。
人生なんて所詮ただの出来レースだ。初めから結末に至るまですべて揺るぐことなく決まっている。運命という作者によって描かれた物語に他ならない。
運命を変えるなどと言っている人ほど台本通りに動くことしかできない。
なんで気づかない?
自分で踏み出したと思っているその一歩の足元には、すでにレールが敷かれているということに。踏み出すか踏み出さないかという行動そのものが、すでに台本に書かれてあるということに。
運命なんて何者にも変えられはしない。運命を変えるという言葉も台本をなぞっているだけで、自分の言葉ではない。起承転結もなければ大逆転劇も起きない。多くの人はそんなつまらない物語の主人公として、つまらないまま一生を終える。世の中にありふれた駄作のうちの一つとして。
今日はどんなつまらない物語が待っているのか、楽しみにもなれない。
「おはよう。今日は……」
「おはよう」
挨拶してきた人の顔も見ないまま答える。話を遮った僕のことをどう思っただろう。そんなことをいつもなら思ったはずなのに、変わっていく。このつまらない通学路がどこまでも続くように、退屈な人生は終わらない。
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