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終わらない人生とは裏腹に長かった通学路は終わりを告げ、開きたくもない教室のドアを開く。
なぜか目の前に驚いた様子で彼女が立っている。通行の妨げになっていると思い道を譲るが、彼女はその場から動こうとしない。道を開けるわけでもなく、立ちすくんでいる彼女の視線は僕に固定されている。
どうやら出会い頭に驚いたのではなく、僕という存在に驚いたらしい。ここだけ時が止まったかのように僕ら二人は動かない。
「……何か用でもあるの?」
膠着状態を終わらせるために嫌々口を開く。何をそんなに驚いているのか教えてくれると思った。
「どう、したの?」
質問に答えるでもなく理由を教えてくれることもしない。どうしたのは僕のセリフでしかない。
「どうもしてないけど?」
「……」
その後も彼女は何も答えてくれない。時間を見るともうすぐ朝の補習が始まる。無意味な朝補習の時間は誰のためにあるのかは知らないが、必ず行われる。
「……用がないなら行くよ」
彼女の横を無理やり通り過ぎる。通り過ぎようとする僕を彼女は止めよとはしなかった。
憂鬱。一時間目よりも早く行われる朝の補習。こんなに朝早くから学校に来させておいてその上つまらない授業を行う。授業中に寝るなというほうが無理な話だ。
「眠いのはみんな同じだから寝ないように頑張れよ」
そんな言葉に意味はない。僕らは同じ思いを共有なんかしていないし同じ目的を持っているわけでもない。みんな同じだとしても頑張る理由にはならない。
どんな言葉にも意味なんてない。僕が今想うこの言葉にも。
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