1.天秤と正解のない選択

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 自己紹介が終わり、トイレ休憩の後は体育館で集会だという。本当に人間は意味もないことをすることが好きな生き物だ。集会なんて将来にも現在にも何の役にも立たないと立証するのに、何年も研究する必要なんてないだろうに。  イモ洗い状態の体育館での校長らによる長い話は、精神的にも肉体的にも相当なダメージを僕に与えてくれた。聞いている方は言わずもがな、話している方は楽しいのだろうか。  みんなの心に残るようないいことを言っていると、自分に酔っているような人なら楽しいと思っているに違いない。どうせ集会や演説などで話されるのは所詮、どこかで聞いたことあるようなフレーズばかりだ。  教師なんて自分に酔っていないと務まらない職業なのかもしれない。いや、教師だけじゃなく、人はみな自分に酔っている。自分は特別だと、さながら映画やドラマの主人公と自分を重ねながらに生きている。  自分の人生の主人公は自分。その主張が通るのなら、この世界には主人公しかいないということになる。    主人公しかいない物語を誰が面白いと思うのか。お互いが自分の理想や正義を他人に押し付け合い、正当化しようとする。まるでこの世界のような物語を僕は面白いとは思わない。  体育館から解放されたのは集会が始まって一時間半が経ったころだった。息苦しくなるほど熱気だらけの体育館から少しでも早く出たかったけど、みんなが一斉に出口へと向かうため、出口付近の人口密度がより高くなる。体育館の出入り口はもっと大きくすべきだと改めて思った。 「部活の見学は自由なので」  担任の話で帰りのホームルームが終わった。  周りではすでにいくつかのグループができていて、楽しそうに話している。
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