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結局答えは見つからない。
朝、学校に着くと靴箱でバレー部の彼女を見つけた。誰かを待っているのか教室に行こうとしないで、ずっと同じところを行ったり来たりしている。
彼女、五十嵐さんとはあまり話したことはない。なので用事があるのは僕ではないことくらい分かる。
「あ、あの上靴はどうしたの?」
声の方を振り返ると、五十嵐さんが立っていた。僕の方を見て言っているので、間違いなく僕に話しかけている。でも、なんで?
「最近無くなった」
本当のことを言うと、彼女は少しだけ顔を歪める。
「……私のせいかも」
「え?」
言葉の意味がよく分からず彼女に聞き返そうと思った。
「ごめんなさい」
ますます意味が分からず、さっきの言葉も含めて聞き返そうとしたが、彼女はすでに教室の方へと走り去っていた。彼女が僕の上靴をどこかに隠したということだろうか。
何のために?
教室の前では神妙な顔をした平野くんが立っていて、こちらに気付くなりさらに神妙な顔をしてこちらに近づいてくる。彼がこんな顔をするのは珍しい。
「おはよう」
「よ、よう」
歯切れの悪い挨拶。何か隠しているとすぐに分かる。
「教室、入るか?」
「入るけど?」
何の質問?平野くんの横を通って教室に入る。
「……これは?」
花が活けてある花瓶が僕の机の上に置かれていた。その上、汚い字で落書きまでされている。
周りの人に聞いてみるも、誰も何も答えようとしない。靴箱で謝ってきた彼女や平野くんまでもが自分の席について、こちらを見ようともしなかった。どうやらクラス中が無視を決め込んでいるらしい。
ため息も出ない。
花瓶を片付け席に着く。世界の端が少しずつ色を失っていった。
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