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次の日、僕は病院に来ていた。一試合目が終わった後に、病院から連絡があった。
病院に駆けつけ案内されたとおりに奥に進むと、人目を憚らず泣く父の姿と手術台に横たわる母の姿があった。
「手は尽くしたのですが……」
病院に着いてそうそう業務的に告げられたその言葉は何色も帯びていなかった。今、目の前に広がるこの景色のように白黒で冷たかった。
「病気が急に悪化してしまったらしく……」
病気が悪化した?
『見に行きたいの』
笑った母さんの顔と言葉を思い出す。
僕の試合を見に来ようと無理したせいで、母さんの病気は悪化した?僕のせいで?
なんだよ、僕に降りかかる不幸は全部、
「僕のせいじゃないか」
これまで起きたすべてのこと。僕が余計なことをしなければ、存在しなければ誰一人として傷つくことは、死ぬことはなかった。ずっとそこに在り続けた。
何かを得るたびに何かを失う。そんな甘いものじゃない。僕は今まで持っていたものも新しく得たものも失った。この小さな手の中には何もない。もう、頑張る理由も見つからない。
何も見えない。絶望のせいか涙のせいか、何にも焦点が合わない。体の痙攣が止まらず、息をすることもできない。
全部、僕のせいなんだろ?
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