22人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、あの、呼ばれてるよ?」
授業が終わって、外を眺めていると隣の人から話しかけられた。
この前の席替えで隣になった彼女はいつでも比較的におとなしめなので、僕が苦手なタイプではない。ただ、お互いによく話すタイプではないので話したことはない。
「僕が?誰に?」
「いや、廊下にいる人からなんだけど……」
トイレから戻ってくるときに話しかけられたらしい。
「分かった。ありがとう」
誰から呼ばれたのか検討もつかないけど、無視するわけにもいかない。重い足取りで廊下に向かうと、そこに立っていたのは人気者の彼だった。
「どうしたの?」
僕を呼んだ本人は、僕を呼んだにも関わらず何も話そうとはしない。
「僕を呼んだのは君だよね?」
勘違いで声をかけたのだとしたら恥ずかしいので、一応確認しておく。これで間違っていても後の祭りだけど。
「ああ」
間違ってはいなかったのでとりあえずは安心する。
「……」
「?」
沈黙。彼は何かを話そうとしては言葉にするのを躊躇っている、ように見える。
「二人してどうしたの?」
彼と同時に声がした方を見る。
「……野口」
僕よりも先に彼がその人の名前を呼んだ。
最初のコメントを投稿しよう!