3.告白と叶わなかった約束

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「空野くん、あとで職員室に来てね」  みんなが一斉にこちらを見る。  静かな空間に音がすると、そこにいる人たちは一斉に音のした方を見る。傍から見たら間抜けに見える光景だが、その場にいたら必ず見てしまうだろう。好奇心なのか本能なのかは僕には分からない。    けど、なんで?  何かをした覚えはないので怒られることはないだろうが、だからこそ余計に何故なのか分からない。  ホームルーム終了後にわざわざ職員室に呼ぶくらいなら、職員室に戻る前に教室か廊下で話してくれればいいのに。職員室なんてできれば入りたくない。  ん?そうか、廊下で呼び止めて話を聞けばいいのか。  思い立ったが吉日、さっさと終わらせてしまおう。 「先生」 「ん?おっ、空野くんかあ」  途中の廊下で呼び止めることには成功したけど、予想外なことに、ここではあれだからと職員室まで連れていかれてしまった。  先生に連れ立って職員室に入ろうとすると、 「こら、失礼しますは?」  と頭を触られる程度に軽くチョップされた。  担任を含む教師に興味ない僕は知らなかったけど、どうやらこの先生は生徒たちからの人気は高いらしい。まだ若いのにしっかりしていて、明るい上にちょっと抜けていて、誰とでも気さくに話してくれる。生徒から見たら理想の教師、らしい。一番の要素はその容姿らしいけど。  「……失礼します」 「よくできました」  頭を撫でられようとしたので反射的に回避したら、口を尖らせて自分の机へと僕を案内してくれた。  子供みたいだけど、だからこそ生徒とも打ち解けられるのかもしれない。 「さて、話だけど」 「はい」 「多分だけど長くなりそうだから、やっぱり昼休みに来てくれないかな?」 「……」  本当に勘弁してほしい。この人は僕をいじめて楽しんでいるのだろうか。 「ごめんね」 「……分かりました」  そう言うしかない。 「あ、そういえばさ」  まだ何かあるのか? 「先生の名前はちゃんと覚えてるよね?」  ニヤリとしながら見てくる担任。覚えてないとは言えないが、なんだと聞かれたらそこで覚えていないとばれてしまう。だけど、 「覚えてま……」 「昼休みまでに覚えておいてね」  僕の話を遮って覚えていないと決めつけるとは、もうすでにばれているということか? 「あ、やっぱり放課後にしてもらえない?昼休みは他の生徒と面談が入ってるんだった」  一体僕のことをどこまでボコボコにするつもりなんだ、この先生は。 「放課後はちょっと」 「でも、部活には入ってないでしょ?」 「うっ……」  何も言い返せない。用事があるからとか、適当に嘘をついて諦めてもらおう。嘘をつくことは得意なはず。 「……」    この方法は何の解決策にもなっていない。部活に入ってもいない僕が、毎日のように何か用事があるはずもないことくらい誰にでも分かる。いくら先延ばしにしてもいずれはやらなければならない。 「いいでしょ?」 「……はい」  先生はふふっと軽く笑って言った。 「君とはいろいろ話したいこともあるしね」
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