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僕の高校生活は何もなく、退屈なまま毎日が過ぎていった。相変わらず友達もできないし、楽しいことが起こる様子もない。楽しいことが何かなんて自分でも分からないけど、どこかで変化を望んでる自分がいる。でも、友達は別に望んでいない。人間関係なんて深くても浅くても、いつだって面倒でしかない。
『楽しいと思うことやりなよ』
熱中できるもの、これだけは負けたくないというものが僕にはなかった。自分が空っぽのような気がして、空いた穴を埋めるためにいろんなものに挑戦したこともあった。その結果がこれだ。
昔から勉強もスポーツもある程度出来てしまう。ある程度出来てしまうゆえに何をしてもある程度で終わらせてしまう。うまく入り込むことができずに、冷めてしまう。目の前にあるはずの超えるべき一線が越えられない。
僕は自分の無力さを自分で証明しただけだった。
何の生産性もない毎日。そんな抜け殻みたいに生きていく日々の中で、僕はまた過ちを犯してしまうのだろうか。
「空野くん、おはよう!」
普通の人はしないであろう人間違いをした彼女は、あの日以来、何かと僕に話しかけてくるようになった。何故か僕に話しかけてくるクラスメイトの一人だ。
彼女はどんな人にも明るく振舞うので僕にもついでに話しかけてくれているのだろうが、僕に話しかけてくる頻度が他の人より多いような気がするのは気のせいだろうか。
「聞いてよー。先輩たちよりうまい自信あるのにさ、一年生は声出しとかしかやらせてくれないんだよ?ひどいと思わない?」
バスケのことについて何も言えない地蔵のような無能の僕に、なんでバスケのことを話すのか。
「そうなんだ」
僕は本を読みながら彼女の話に相槌を打つ。僕は君が満足できるような答えを持ち合わせていない。
「ちゃんと聞いてる?」
「聞いてるよ。仕方ないんじゃない?」
「そうだけどさー」
不満そうな顔をして口を尖らせる彼女を横目で見る。本当に表情が豊かな人だ。
不満そうな顔をしているとはいえ、どこか楽しそうでもある。余程毎日が楽しいのか、あるいは僕と話すことが楽しいのか。答えは圧倒的に前者なんだろうが、ずっと笑顔でいるなんて僕にはできそうにない。
有意義な人生でうらやましい。今も、そしてこれから先も。
「空野くんも部活したらいいのに。体力測定の結果よかったじゃん」
いつの間に見たんだ?確かに運動は苦手ではないが、友達もいないしそこまで目立ってなかったはずだけど。
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