1.天秤と正解のない選択

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1.天秤と正解のない選択

春を象徴する桜の花びらが僕の目の前をひらりひらりと過ぎていく。それが目障りで僕は目を閉じる。瞼の裏に映る光景はいつもと変わらず、僕を生から遠ざける。  春は嫌いだ。季節が変わっても僕の心が氷解することはなく、消し去りたいのに余計に降り積もっていく。    桜だってきっと春が嫌いだ。僕のように、ただ無情に過ぎていく春が嫌いだ。
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