プロローグ 最後の記憶

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プロローグ 最後の記憶

 「聖夜……必ずっ、また会おうね」  「それまでに、ぼく、強くなるから」  「そのとき、聞いて欲しいことがあるんだ。聞いて、くれる?」  頭の中に流れ込んでくる、ある夏の思い出。  それは誰よりも、大切な人との約束。「おとぎの森」の近くにあった、ひまわり畑での出来事。  里親に引き取られる直前、交わし合った約束だった。  あの時、自分はどう返したのか……  身体中が痛く、血まで流れている頭では、何も思い出せない。  もう、限界だ……  満身創痍の身体が、崩れるように草むらの中に倒れ込む。  それでもまだ、と。うつ伏せだった身体を何とか仰向けに変える。  「な、つ……き……」  降り頻る雨に手を伸ばし、そう呟いて最後。少女の意識が途切れた。
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