02 邂逅

1/4
前へ
/30ページ
次へ

02 邂逅

 あれから数日。  好きなサッカーが思う存分出来る合宿だというのに、聖夜は気分が晴れずにいた。  酷くはならないものの、やはり不定期に続いている“例の頭痛”。それに加えて、地原中学校のこと。  彼らが何かしてきたワケではない。当たらず触らず、普通に接して来ている。  では何が問題なのか――視線だ。  もちろん、地原中学校 サッカー部全員ではない。ほんの数人だけで、練習の間に名前を覚えてしまった。  ――キャプテンにしてGK(ゴールキーパー)の灰路 零、FW(フォワード)碧水 輝夜(あおみず こうや)。そしてMF(ミッドフィルダー)の、緑川 夏樹(みどりかわ なつき)。  選手だとその3人、特に碧水と緑川がやけに凝視していた。  他にもマネージャーが2人。名前は確か……白峰 真莉愛(しらみね まりあ)赤鬼 美伽(あかぎ みか)だったか。  この5人が、やけに自分のことをジロジロ見ていた。最初は選手としてマネージャーとして見ていたんじゃないか、気にし過ぎなんじゃないかと思っていたが……段々と違うことに気付いてきた。灰路ならともかく、他の4人は一体何が理由なのか。  緑川や赤鬼は話しかけたいような、モジモジとした視線。何故か睨んでくる白峰や碧水よりはマシに見えるかもしれないが、実はコレがなかなかにイライラしてくる。  「くそっ、何なんだよ……」  吐いた悪態は、独り寂しく風呂の天井に響いた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加