02 邂逅

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 「なぁ、話の続き。聞いても良いか?」  「えっ、う、うん。良いよ」  「お前、さっき“死んだかもしれない”って言ってたが……どういうことなんだ?」  「――実は、遺体が見つかってないんだ」  緑川の話によると、その幼馴染は8歳の頃に里親に引き取られ、緑川たちとは離れ離れになってしまったらしい。2年後に再会する予定だったが……向かっている最中、交通事故に遭った。  「里親の遺体は見つかったんだけど、幼馴染の遺体だけはどうしても見つからなくて。院長は死んだって諦めてるけど、僕たちはそう思ってない。あの子は……“聖夜”は、きっと何処かで生きているって信じてるんだ」  目を丸くした。自分の名前を、呼ばれた気がしたからだ。聞けば、その幼馴染も“聖夜”という名前だったらしい。  「それで俺を見た時、灰路さんやお前たちは驚いたってワケか」  「ごめんね。知らず知らずの内に、不愉快な想いをさせちゃってたみたいで」  「あー……まぁ、気にすんな。理由が理由だったんだしよ」  正直、睨まれるのはゴメンだが――という言葉は喉奥に留めておき。気まずさごと呑み込むように腰を上げて、  「いつか、会えると良いな。ソイツに」  「――! キミも、信じてくれるの?」  「まぁ、一応。名前まで同じじゃあ、ちょっと生存信じたくなるだろ。遺体が見つかってないなら、尚更な」  「……ッ、ありがとう」  「おう」  そう言って、聖夜は休憩所スペースを後にした。  部屋に辿り着く直前。ふと足を止めて、そっと心臓の辺りを抑える。  先程から頭の中を過る、緑川の微笑みのせいだった。  思い出す度に、胸の奥が、ずくりと疼く。身に覚えがないはずのそれは、ほのかに甘く、どこか懐かしくて。少しだけ、痛かった。 「……アイツ、ホントに嬉しそうだったな」  その夜は結局解らないままで終わってしまったが……それを“思い出す”刻は、すぐそこまで迫っていることを――まだ誰も知らない。
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