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 家を出て、少しの間無言だった。  何だか胸が一杯で。俺がいつも接している彼女、そして知らなかったよそゆきの彼女に会えた。ふと、彼女が声をあげた。 「あっ!」 「何?忘れ物?」  「すんごい忘れ物。どうしよう」 「取りに行く?」 「それは無理。だって…」 「何、どうしたの?」  「手土産。緊張しすぎて忘れてた」 「何だ。そんなの良いよ」 「うちの玄関に置いたまま。今日、午前中に出かけて買っておいたのに」 「何を買ったの?」 「和菓子。京都の物産展で試食したらすごく美味しくて。包装も綺麗だから手土産にぴったりだと思って買ったの」 「和菓子で日本酒のお飲むのが、うちの両親は大好きなんだ」 「わ、嬉しい」 「でもさ。二人で食べちゃおうよ」 「駄目です。ちゃんと私たちの分も買いましたから。日持ちするから、明日届けて貰えますか?」 「それならいいよ。美花のだから、俺が一番じゃなきゃ気が済まない」 「え?」 「もういい。帰ろう」                             電車は座れるくらいだったけれど、寝てしまいそうだからと彼女に言って、ドア近くに二人で立っていた。移動の約20分、手をつないだままただ寄り添って帰った。  駅に着き、歩き始めてeternalの前を通った時、彼女が言った。 「日曜日、いつもすごく忙しいですよね?日曜日泊まったらいいのに。結局、店休日もお花が気になって様子を見に行くでしょう?それなら余計に」 「いいの?本当のこと言って」 「だって非効率ですよ」 「美花、答えるからよく聞いて」 「はい」 「これ以上の質問も抗議も受け付けない。おもいっきり、美花のこと愛したい。だから、美花の休みの前日に泊まりたい。以上!」  自分で言っておいて、顔から火を噴くほど恥ずかしかった。  その日も俺は彼女に夢中になった。適度な酔いは、人を素直にさせるらしい。たぶん、この間の彼女もそうだった。  俺は彼女に甘えたり、強気になったり、懇願したり。素直に彼女を愛した。  翌日彼女は起きられなかった。その気だるげな様子が色っぽく見えて、また彼女を求めた。日曜日の朝、ぐったりしている彼女に反して、俺はご機嫌で仕事に出掛ける。   両親に、俺は彼女の“特性”について言わなかった。少しずつ伝えていけば良いと思ったのは、俺が甘かったのだろうか。
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