02 半夏生

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「それなら、このまま出かけませんか。先延ばしにすると、お互い仕事で都合がつかなくなるかもしれません。」  誘うことに意識がいっていて、実際の場面は何も想定していなかった。私の経験値なんて皆無だから、どうしていいか分からない。  ーうん。困ったら逃げる。   失礼のないように。   何せ、誘ったのは私だから。 「私、こんな格好です」 「そんなに高いお店にはご案内できません。俺はデニムですし。」  そう言われたら断りようがないかも。どうしよう、と思いながらも思い付いたことを伝える。 「そんな。私が誘ったので私がお支払いするつもりです。」 「初めて一緒に食事をする女性に、支払いなんてさせませんよ」   私は一瞬黙った。やっぱり異性同士の食事になるのか。それなら、誘った私は軽い女になるのかな。  うーん。  色々ぐるぐる考えても仕方ない。  誘ったのは私。  紳士的な店長さんがOKした。  事実はそれだけだから。 「店じまいをしますが、美花さんその間、どうされますか?」 「お花はまた後で買いに来ます。お邪魔はしないようにするので、お花を見せていただいても?」 「もちろんどうぞ」  私は、お花を見て心を落ち着かせることにした。何だか緊張してしょうがないから。  店長さんの準備が整ったから、先に店を出て消灯し戸締まりをする彼を待った。 「お店を決めていませんでしたね。どこか、おすすめはありますか?」 「和食か洋食、どちらがいいですか?」 「いえ、美花さんにお任せします。連れて行ってください」  私は行きつけのとんかつ屋さんに店長さんを連れて行くことにした。近いし、美味しいし、男の人はたいていとんかつが好きだと聞いたことがある。 「おいしいんですよ。ここ!」  正直なところ、そろそろ食べたい気分だった。忙しくて、なかなか行けなかったから。    店内は思った以上に客が多く、小さめの二人がけのテーブルに通された。 「野菜もお肉も摂れるでしょう?朝昼まともに食事ができないときでも、ここに来ると満たされる気がするんです。揚げ物でも油とお肉がいいから、ちっとも重くないんです」 「お仕事、忙しそうですね?どういったお仕事されているんですか?」
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