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初めて動物園に行ったのは、六歳の時だった。父親が唐突に動物園に行こうと言い出したのだ。
手を引かれ、入った上野動物園。一匹の動物に俺は目を奪われた。
大柄な身体に映える白黒のコントラスト。ぼんやりとした垂れ目を見たとき、俺は来た理由を悟った。
インスタントカメラのシャッターを切っても、そいつは知らんぷりをしていて、マイペースな姿勢が可愛らしいと思えた。
次に動物園に行ったのは、一四歳の時だった。
父親の仕事の事情で、和歌山に引っ越した俺たちは、次の週末に、アドベンチャーワールドを訪れた。ブリーディングセンターと呼ばれる施設で、俺は運命的な出会いを果たす。
その名は清々(セイセイ)。当時、中国からやってきたばかりの二才のパンダだった。
活発な表情とは裏腹に気だるげに過ごす清々を見た瞬間、電流が走った。簡単な言葉では片付けられない複雑な何かを感じた。
帰ってきてからも、デジタルカメラの写真ばかり見ていた。早く学校に行って、まだ見ぬクラスメイトと語り合いたいと思った。
あれから二三年の時が流れた。その間、俺は和歌山から離れず、大学も就職も和歌山で行った。海も山も近い和歌山の空気が肌に合った。
九月最初の日曜日、俺は一〇年間愛用している一眼レフを持って車を降りた。一〇時の開園を待って、職員に年間パスポートを見せる。
ブリーディングセンターには、三頭のパンダがいた。長女の楼浜(ロウヒン)は、床に座って笹をくわえ、次女の好浜(コウヒン)は四足歩行でのそのそと歩いている。俺はひとまず二頭の写真を撮ってから、奥にいる一番のお目当てへと向かった。
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