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第5話:宣告
昼休み、剛、健次、一の3人は体育館の裏にいた。
「調子乗ってんじゃねぇぞ、こら!!」
「眼鏡外してよ~、粋がるなよ!!」
そう言いながら二人は一を殴った。一は痛がる訳でもなく、抵抗する訳でもなく、ただずっとニヤニヤした笑みを顔に貼り付けて、されるがままだった。その笑みが不気味で二人は更に殴る。
5分は経っただろうか。二人は肩で息をしながら一を見る。一は立ち続けていた。昨日までは一発殴れば吹っ飛んでいたというのに。
「はぁはぁ、お前……。さっき笑ったよな? 隆史が死んだっていうのに笑ったよな? どういうつもりなんだよ!!」
剛は一の胸ぐらを掴み言う。
「今朝、こいつの靴箱に変な手紙入れたのもお前だろ。悪趣味なことしやがって! 人が1人死んじまってるんだぞ! 人の死を……隆史の死を弄ぶんじゃねぇよ!」
健次は胸ぐらを掴まれている一を横から殴った。鈍い音が響いた。一は少しよろついた。
「ははっ……。ははははははは」
一はせき止めていた何かを溢れさせたかのように笑った。
「な、なに笑っているんだよ……」
「人のことをさんざんいじめ抜いた奴がなに言ってるんだよ。馬鹿だろ、お前ら」
「なっ……」
「お前らみたいなクズは死んだ方がいいだろう。その方が社会のためだ。俺がお前らも殺してやるよ」
「お前らも……?」
「なんだお前ら手紙の1つも読めないのか? 俺が殺したんだよ」
「お前なんかが隆史を殺せるわけねぇだろ! 実際、先公が隆史は誰かに殺された痕はないって……」
「俺は死神だぜ? 痕跡なんて残すかよ」
「お、お前……頭イカれちまったのか。」
剛と健次は一歩後ずさる。
「わかったよ。じゃあ、この場で殺してあげるよ」
一は右手を横に上げた。大鎌を出そうとしたその時だった。
キーンコーンカーンコーン。昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
一は上げていた右手を下した。
「なんてね。」
一は笑顔で言った。
「こんなところで一時の感情に任せて殺しちゃったらもったいないよ」
一は剛と健次、二人の間を抜けて校舎へ向かう。
「あ、そうだ。」
一は不意に止まり、二人を振り返り、言う。
「村下剛。今日中にお前を殺す。帰り道に気を付けろよ」
二人はその場に立ち尽くしたままだった。
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