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第7話:3人目
「なぁ、ちょっとツラ貸せよ」
翌日の朝、教室にまだ一以外誰も来ていないくらいの早い時間に声の主である健次は一の前に現れた。
「どうしたの? 今日は早いね。珍しい」
「んなことはどうでもいい。早くついてこい」
一は顔をしかめた。健次の態度が気に入らなかったのだ。健次はもっと怖がっているものだと思っていた。体を震わせて部屋に引きこもり、学校を休むと思っていた。恐怖を刻み込んだはずだ。なのに。
一は自分の席からおもむろに立ち上がり、前を歩く健次の後ろをついて行った。
健次の向かった先は死神と出会った場所、屋上だった。さわやかな朝の風が吹く。そこには青空が広がっていた。
「ここなら邪魔も入らねぇだろ」
健次は振り向いて言った。
「俺とタイマンはれよ」
一の計画が狂っていた。一の計画では自分の家で恐怖に震えている健次の前に現れ、拘束し今までに自分がされた仕打ちを一つずつ経験させ、剛以上に怖がらせ、苦しませて殺すはずだったのに。まさか、学校に来て自ら仕掛けてくるとは思っていなかった。
まぁ、構わない。いくら健次が粋がって自分に向かってきてもどうってことない。死神の力を持つ俺が負けるわけがない。圧倒的な実力差を見せつけて心を折ってから拷問してやればいい。
「いいよ」
一がそう言うと同時に健次は突進してきた。勢いそのままに右の拳を一の顔面目がけてだす。その拳を一はなんなくかわす。
一は思った。死神の力が無かったら前みたいに無様に殴られてたんだろうなと。死神の力を持った今は健次の拳が止まって見えた。昨日だってあんなに速く走れたし、暴れるあいつを簡単に制圧できた。
「こんな風になっ!!」
一は突進してきた健次の腹部目がけて蹴りを放った。
「ぐっ!!」
そんな汚い声と汚い液体を口からこぼしながら柵まで吹っ飛んでいった。柵に体を強く打った健次は痛みのあまりその場から動けずにいた。柵は大きく歪んでいる。
一は醜くうずくまっている健次のもとへゆっくりと歩いていく。あまりにも動かないので死んだかとも思ったが浅い呼吸をしているようで安心した。まだ十分に苦しみを与えていない。これっぽっちで死なれたら面白味がない。
「おいおい。あんだけ息巻いてタイマン申し込んできたくせにもう終わり?」
それに対する返事はない。
「俺が質問してるんだよ。返事をしろ! 返事を!!」
2、3発健次を殴りつける。もちろん即死させないように手加減して。
「……」
やはり返事はない。できないのかもしれないが。
「はぁ。もういいや」
一は健次の首を掴み軽々と持ち上げた。健次の足が地面から離れる。一は手を柵の外側に伸ばした。健次の体は空中に放り出された状態だ。
「死ねよ」
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