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第8話:最高
「くっ……がっ……」
健次は苦しそうな声を出す。いまや健次は、命綱になっている自分の首に伸びている一の腕を必死に掴むしかできない。そんな必死な健次の顔を見て一は口を歪める。
「お前、醜い顔してるな。どうだ? 今の気分は。自分より下だと思ってた人間にこけにされる気分はよ」
「そ……そんなことっ、思ってな……」
「そんな訳ねぇだろ!!」
一は怒鳴る。
「自分より下に思ってるからいじめるんだろ!? お前は自分より強そうな奴をいじめようとするのかよ!!!」
一の手に力がこもる。
「がっ……」
より強く首を掴まれた健次はうめき声をあげる。
「お前たちみたいなクズが楽しい学校生活を送って、なんで俺みたいな何も悪くない人間が苦しい地獄みたいな学校生活を送らないといけないんだ……」
どんどん一の手に力がこもっていく。健次の首の血管が浮かび上がっていく。同時に健次の顔も赤くなっていく。
「お前らみたいなクズは死ぬべきなんだ! 死んだ方が社会のためなんだ!! 俺は社会のためにお前らを殺すんだ!!!」
みるみる健次の顔が赤く染まっていく。
「や、やめて……。やめてくれ……。助けて……くれ……」
一は笑みを浮かべながら言う。
「お前たちは俺がそう頼んだ時にやめてくれたのか?」
一は健次の首を掴んでいた手を放した。
健次の体はすぐに一の視界から消えた。手を放した瞬間の健次の顔が、あの絶望した顔が一の脳裏に焼き付く。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
健次の断末魔は遠ざかっていき、ぐしゃっという汚い音と同時に止まった。
一は柵から身を乗り出し、さっきまで健次だった肉塊を見た。見ると、一の心に後悔が芽生えた。もっと苦しめてから殺せばよかった、せめて死ぬ直前の顔を見てもっと楽しみたかったと。
「ま、いっか」
これで俺の願いは達成された。俺を苦しめ続けたあいつらは死んだんだ。俺が殺したんだ。そう思うと笑いがこみあげてきた。
「ふふ……ふふふ。ははははは!! やった! これで俺はじゆ……」
そう言いかけて一はやめた。数時間後に自分の身に起こる出来事を思い出したのだ。
「……」
一はその場で少し考え、この先のことについての考えをまとめた。
「よし」
一は何かを考えつき、教室へと歩き出した。歩く一の顔は自分をいじめてきた奴らを殺した興奮からか、数時間後に起こることへの興奮からか笑みを浮かべていた。
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