ふたり

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「おはようございます。ひまわり家事代行サービスです」  明るい挨拶が玄関に響いた。 「おはよう。そんな、よそよそしい挨拶はいらないわよ、妃茉里ちゃん」  雅代が笑って言うと、妃茉里ちゃんもふふっと笑う。 「雅代さん、おはようございます。今日は何しましょうか」 「そりゃもう、パーティーの準備に決まってるじゃないの」  楽しそうに言う雅代に、妃茉里ちゃんも頷く。 「ですよね。今日は私、ここしか仕事入ってないんです。だからもう時間無制限ですから」 「あら、そう言って何時間分も料金取ろうって言うんじゃないでしょうね」 「しないですよー、そんなこと」  そんなことを言いながら、ふたり並んで台所に立つ。  もし、息子にお嫁さんがいたら、こんな感じだったんだろうか。  雅代は、まさかこうやって誰かと並んで台所に立つ日が来るなんて思ってもいなかったから、不思議な気持ちになる。それはもちろん、とってもとっても幸せな気持ちだ。 「あ、雅代さん、ケーキ頼んでるんで、もう少ししたら取りに行きますけど、他に何かいるものあります? 買ってきますよ」 「ええとね、あの、紐を引っ張ったらパーンって鳴るの何だったかしら?」 「あ、クラッカーですね」 「そうそう、クラッカー、もう名前が出てこなくて嫌になっちゃう」 「ふふっ、了解です。飾り付けもしなきゃですね」  妃茉里ちゃんとの会話はとても楽しい。  心配しないでね、私はこんなに元気に楽しくやっていますから。  雅代は、写真の中の息子と夫(ふたり)に微笑みかける。  私には、こんなに素敵な嫁と孫(ふたり)がいてくれるのよ。  しばらくすると、部屋中が美味しそうな匂いで溢れた。  今日は幸多くんの九歳の誕生日だ。                ー終ー
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