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雅代と幸多
「どう呼ぼうかねえ」
雅代は助手席の幸多をちらりと見た。幸多は持ってきた大きなリュックサックをガサゴソさぐっている。
「さちおでいいんじゃないの?」
幸多はやっと取り出したチョコバーをかじりながら、雅代の方を見る。
二人の乗っている小さなベージュ色の軽自動車は、公園横の有料駐車場に停まっていた。
「そのまま呼ぶわけにもねぇ……」
雅代は、助手席に座る小さな同乗者を眺める。ふと、リュックサックについているネームタグが目に止まった。
幸多……幸、多かれ……両親が名前に込めた意味はすぐに読み取れる。いい名前だ。
でも、本人は雅代に喜んでついて来るぐらいだから、そう幸せでもないのだろう。
雅代は、季節外れの長袖を着ている幸多のためにクーラーの風を強め、自分はカーディガンを羽織った。
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