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「さちおくん、みんなには秘密だからねえ、秘密の呼び方した方がいいと思うのよ……」
幸多……こうた……そうだ、こうちゃんはどうだろう。
「こうちゃんってよんでもいいかしら。ほら、幸多ってこうたとも読めるでしょ」
「うん、いいよ。こうちゃんね。松田のおばちゃんのことは何て呼べばいいかなあ。そのままじゃない方がいいんでしょ?」
幸多は相変わらずチョコバーをかじっていた。口元にはチョコがついている。
子どもってどうしてこう、口まわりにつくのかしら。雅代はそんな幸多がかわいくて、もう顔が綻んでくる。
「私はほら、ばあちゃんでいいんじゃないの? チョコついてる……」
言って、口元をふいてやる。
「わかった、ばあちゃんね」
ニカッと笑った幸多の前歯もチョコだらけで、もう雅代は笑うしかなかった。
こうちゃんとばあちゃん、二人の呼び方が決まると、雅代は幸多のリュックサックからネームタグを外し、ダッシュボードに仕舞った。
車を駐車場から出し、国道に向けてハンドルを切る。
少しの不安とたっぷりのワクワク感。
こうちゃんとばあちゃん、ふたりの気持ちは同じだった。
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