雅代と幸多

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 小一時間後には、二人は遊園地に来ていた。ゴールデンウイークが始まったばかりで、人出は多い。  七十過ぎの雅代には孫と遊園地を回るなんてハードなイベントではある。でも、幸い、ついこの前まで夫の介護であくせく動き回っていたこともあり、身体は丈夫だった。  だいぶ日が高くなってきた。初夏でも昼間はかなり暑い。雅代は羽織っていたカーディガンをぬいで腕にかけた。  こうちゃんは相変わらず長袖で、めくりもしない。額には汗が浮かんでいる。 「こうちゃん、お昼ごはんにしようか。何が食べたい?」  雅代は日陰の飲食エリアにこうちゃんを誘った。 「うーん、これ!」  こうちゃんはハンバーガーショップの看板を指差す。 「ん? ハンバーガー食べたいの?」 「ううん、これ! 食べたことないの」  こうちゃんが指差したのはポテトだった。ポテトを食べたことがないだなんて……。  雅代は息子が幼い頃によくポテトを食べていたことを思い出す。  もし孫がいたならば、ちょうどこうちゃんぐらいだろうか。そう思うとますます目の前にいるこうちゃんが愛おしくなり、何でも言うことを聞いてしまいたくなる。 「よし、ばあちゃんが買ってあげよう。唐揚げも買っとこうか。ジュースも飲むでしょ?」 「本当? やったー!」  雅代は無邪気に喜ぶこうちゃんを見て、これが「ばあちゃん」なんだな、と、自分の立場と喜びを噛み締めた。
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