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信雄と美紗
「こんなもの、信用してもいいのか?」
信雄は目の前のA4用紙を見つめていた。
「でも、いい話じゃない。何もしないでお金が手に入るのよ? 行って損はないと思うわ」
美紗はもう食いついているようだ。こんな紙切れ一枚を信用してもいいものなのか怪しくはあるが、信雄も確かに行くだけ行ってみても良いように思う。
二人は定職についているわけではなく、いつも詐欺まがいのことに手を出しては金を儲けていた。
霊能力者を騙って訪問販売をしながら、時には首謀者もわからない詐欺の出し子や受け子といった仕事をしている。
手取りはどちらも一回、数十万といったところだ。でも、今回は桁が違う。
「明日、16時ちょうど、横浜駅南口横、コインロッカー、○✕△番、鍵はロッカーの上に有り、一千万円受け取れ、全てお前達のものだ」
二人が住むアパートのポストに届けられていたのは、白い封筒に入れられた一枚の用紙だった。
差出人も何も書いていない。
普段ならネットを介しての仕事依頼がほとんどで、こんな手紙でのやり取りは初めてのことだ。
コインロッカーで一千万円を受け取るだけで、しかも全額もらっていいなんて、こんな話は今までにない話だった。
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