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それでもやっぱり……
「警察や児童相談所に相談してほしかったと思います」
三崎は力強く言った。それが自分たちの仕事だ。不器用で遠回りかもしれないけれど、正しく捜査して悪い奴を捕まえ、被害者を保護する。
今回の事だって、うまく解決する方法があったはずだ。何より、このふたりを『誘拐犯』にしてしまうことだけはなかった。
たぶん、そんな三崎の思いを理解したのだろう。
「そうね。自分たちで頑張りすぎちゃったのかもしれないわね」
雅代はマリの肩を抱いたままそう言うと、三崎を見て優しく笑った。
「あの……刑事さん、雅代ちゃん、悪いことはしてなかとよ。こうちゃん、すごく楽しそうにしてた。本当よ」
いつの間にか側に車椅子の緒方久美子が来ていて、三崎を潤んだ目で見上げていた。
「くみみ、ありがとう、大丈夫よ」
それに雅代が近寄り、優しく手を握る。
「それにしても、くみみのお茶畑、とても素敵ねえ。会いに来てよかったわ」
雅代の言葉にふと顔を上げた三崎の目に、みずみずしい緑が飛び込んできた。さっきからずっと見ていたはずなのに、その圧倒的なほどの緑は、今初めて三崎の目に映った。
なんてきれいなんだろう。
ほのかにお茶の薫る爽やかな風が、三崎の髪を揺らした。
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