48人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
あれほど当惑していたにもかかわらず、誰よりも真っ先に寝てしまったのはエーラだった。もう大きな鼾をかいている。隣のルフィナはとても眠れる気分になれなかった。フェルディオが気になって仕方がないのだ。ぴくりともしないとこを見ると、とっくに寝てしまのだろうか。
『そうよね。フェルディオ様だって疲れてるんだから、寝てしまって当然だわ。一応、これが私たち夫婦にとって初めての夜ではあるんだけど……でも、まあ、こんな状況じゃ、ね』
ルフィナは迷いに迷った末に、思いきってフェルディオの手に触れてみた。
『これくらいいいわよね』
手を繋ぐように自らの手を滑り込ませた瞬間、ぎゅっと固く握られた。ルフィナは危うく声を上げそうになった。フェルディオもまた眠れないのだった。がばりと寝返りをうつようにして、ルフィナの体を懐の中に引き込んだ。ルフィナは小声で抗議した。
「ちょっと、フェルディオ様! 隣にエーラがいるのをお忘れではないわよね?」
「分かってますよ」
そう答える声は優しいけれども、残念そうな響きがなくもない。
「今夜は我慢します。ですが……せめてこうして寝るくらい構わないでしょう?」
先ほど再会したばかりの時も、フェルディオはこうやって抱きしめてくれたが、ここまで心臓がドキドキしなかった。そして、暗闇の中で受けるキスは、これまでのどんなキスよりも刺激的だった。
フェルディオはルフィナの耳元で囁いた。
「この続きはまた今度。二人きりになった時にしましょう」
翌朝、誰よりも真っ先に起きたエーラは、幸せそうに寄り添っている若い夫婦を見下ろして、やはり自分は厩で寝るべきだったと激しく後悔した。
最初のコメントを投稿しよう!