第十章 デクレトリ

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 あれほど当惑していたにもかかわらず、誰よりも真っ先に寝てしまったのはエーラだった。もう大きな鼾をかいている。隣のルフィナはとても眠れる気分になれなかった。フェルディオが気になって仕方がないのだ。ぴくりともしないとこを見ると、とっくに寝てしまのだろうか。  『そうよね。フェルディオ様だって疲れてるんだから、寝てしまって当然だわ。一応、これが私たち夫婦にとって初めての夜ではあるんだけど……でも、まあ、こんな状況じゃ、ね』  ルフィナは迷いに迷った末に、思いきってフェルディオの手に触れてみた。  『これくらいいいわよね』  手を繋ぐように自らの手を滑り込ませた瞬間、ぎゅっと固く握られた。ルフィナは危うく声を上げそうになった。フェルディオもまた眠れないのだった。がばりと寝返りをうつようにして、ルフィナの体を懐の中に引き込んだ。ルフィナは小声で抗議した。  「ちょっと、フェルディオ様! 隣にエーラがいるのをお忘れではないわよね?」  「分かってますよ」    そう答える声は優しいけれども、残念そうな響きがなくもない。    「今夜は我慢します。ですが……せめてこうして寝るくらい構わないでしょう?」  先ほど再会したばかりの時も、フェルディオはこうやって抱きしめてくれたが、ここまで心臓がドキドキしなかった。そして、暗闇の中で受けるキスは、これまでのどんなキスよりも刺激的だった。  フェルディオはルフィナの耳元で囁いた。  「この続きはまた今度。二人きりになった時にしましょう」  翌朝、誰よりも真っ先に起きたエーラは、幸せそうに寄り添っている若い夫婦を見下ろして、やはり自分は厩で寝るべきだったと激しく後悔した。
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